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神様は賽を振らない 第6章 1

>>01

 たいした時間がたったわけでもないのに、久しぶりに自分のデスクに座りながら、今までと同じような風景に槙田は少し懐かしささえおぼえる。翌日には公安からの拘束が解かれ、新たな任務として9ゲート東への応戦をするように命じられ、秋月のオフィスから元の自分のデスクへと戻ってきていた。秋月とは1度連絡を取ったが、寺尾センター長に関する話はしていない。綾瀬とは連絡さえ取れていない状況だった。秋月に確認してみたが、多分大丈夫という微妙な返答が返ってきた。今は彼女の兄だという公安部の刑事に任せるほかない。
 状況は悪くなる一方と言える。結局ほどなくして10ゲートは陥落。想像よりもはるかに速いスピードで、はるかに最悪の状況が作り上げられていた。どこから沸いて出てきたのかわからない程、自分たちの予測を大幅に超えた数のグールが存在し、それが一気に襲い掛かってきているのだ。こちら側の戦力は目に見えて削られている。
 この状況を見据えていたかの様に、新たな戦力を試験的に投入する運びになっている。その実践に槙田班が選ばれたわけだが、正直槙田は不安だった。何故自分の班が選ばれたのか、理由を知りたい。そうは思っても、命令には従うだけだ。

「なんて言うか、ファーストインパクトの時と同じぐらいヤバイくない?」

 千野が槙田の顔をまじまじと見ながら言った。誰もが似たようなことを考えているが、それを認めてしまうようで敢えて口にしていなかった事だ。槙田はそれに何も答えなかった。

「俺、あれからシェームの事少し調べようとしたけど、たいした情報ないんだな」

 無視された事を気にする様子もなく、腕組をしながら千野は話し続けた。その話に反応したのは尚だった。

「そうなの。私も調べたけど、変に情報少ない気がして。もしかして、会った事あるって言ってた槙田さんなら何か知ってたりしません?」

 2人の視線が槙田へと注がれる。
 確かに、情報は極端に少ない。しかも、見られるデータには書かれていない事がある。だがそれを口にするわけにもいかない。

「そもそも我々と接触回数も少なく、消息もつかめていない状態だったのでそんなものです」

 助け舟を出すように水無瀬が口をはさんだ。

「でも、シェームが関わった事件すら書かれてないんだよ。槙田はその事件の事知ってんだろ?」

 千野が納得できないと言わんばかりに槙田に言う。

「あ、お兄ちゃんも知ってるんだよね?」

 尚は何やら書類に目を通している一にも話を振った。
 そんなやり取りをアレクセイは無言で観察中だ。
 話を向けられた双方が何も答える間もなく、ドアがノックされる。

「どーぞー」

 そう返事を返したのは尚だった。
 ピーッというロック解除の音がして戸が開く。誰が現れるのか、事前通達を受けて知っていたのは槙田と水無瀬だけだ。
 槙田は席を立ち、ドアの方へと出向く。
 現れたのはこんな場所には不釣り合いな、尚と同い年程の青年だ。

「あー、もしかして槙田? って、班長か。ごめん。槙田さんだな」

「公の場でなければ槙田で構いませんよ。俺も敬語の方が話しやすいというか、なんというか」

 槙田は自分の知っている面影の中の彼を青年の中に見つけた。

「いや、お前が敬語はまずいだろ、監視員殿」

「お話し盛り上がってるところすみませんが、どちらさん?」

 千野がイスから身を乗り出すように言った。気付くと槙田の隣には尚が立っている。彼は尚に微笑みかけた。

「本日付で配属になりました、桐島 直(キリシマ ナオ)です。一応副班ってことになってます。一と似たようなもんです。よろしくお願いします」

「同じような役職が2人」

 黙っていたアレクセイがポツリと零した。それを聞き逃すことなく桐島が口を開く。

「まぁ、珍しいよね。普通はない。でも、俺が久遠んさんに無理言ってねじ込んでもらったんだわ。君がアレクセイ君ね。因みに俺こんなだけど中身はおっさんだから、一応グール対でのキャリアはこの中で2番目に長い。上司って感じしないっていうか、不信感満載だろうけどさ、よろしくね」

「それってどういう?」

 彼の言葉に尚が小首をかしげた。確かに、何も知らされていない人にとっては、意味が分からない。

「つまり、僕と同じでクローンなんだよ。見た目は尚とかわらなくても、中身は40代」

 一が書類にペンを走らせながら言う。
 彼も桐島と同じで、ファーストインパクト前は量産型のクローンだった。ただ、研究員、研究所共に壊滅状態になり、そのままクローン作成までも国際条約で禁止になった為、一のパターンは彼が最後の1人となった。

「なんか変な感じだな、昔と逆になったみたいだ」

 桐島が一を見て笑った。
 そんな彼に興味を持っていないかの様に、立ち上がった一が槙田へと書類を手渡し席へと戻る。
 手渡された書類には彼のサインがある。桐島の配属に関してのルールに対する承諾書といった様なものだ。ここへ来る前に渡されていたらしい。

「一とは知り合いなんだ?」

 千野が2人を見ながら言う。

「うん。元同僚。また、よろしくな」

「槙田サン、会議は?」

 桐島のそんな言葉も聞こえてないように、一は槙田に向かって言った。

「相変わらず冷たいなー」

 そんな事も慣れているといった感じで桐島が言う。
 槙田はそんな彼を自分と水無瀬との間の席へと促した。

 この人、桐島 直の救出作戦で、積那由他と一緒にいた子どもの頃のシェームと遭遇した。所謂、シェームが関わった事件だが、この事件は表面上なかったことになっている。本人は憶えていないが、尚も関係している。
 そもそも、桐島 直は処刑され、死亡した事になっていた。そう書類上に記された事実を、ずっと疑う事もなかった槙田は、綾瀬から彼が生きていると聞いても、信じることが出来なかった。
 この辞令で、初めてそれが事実であることを知った。しかも彼が自分の班に配属されるなんて事は夢にも思っていなかった。まだ槙田がグール対に配属されたばかりの頃、一も一緒に彼と同じ班で仕事をしていたことがある。噂通り、優秀な人だった。
 この班への配属を希望したのは本人の意思であるらしい。また一と仕事をしたかったのか、尚の事を近くで見守りたい気持ちからか。どちらにせよ、よく久遠さんはそれを許したなと槙田は思った。あの事件の時のような事が、起きないとは言えない。

「9ゲート東の奪還、及び全線で孤立している9ゲート東の戦員達の救出作戦だが、敵に包囲され、陥落は時間の問題だと聞いている。南も同様に攻撃を受けている状態で、昨日応援が駆けつけ死守しているとの報告を受けた。その流れで、南側を攻撃していたグールが東へと流れてきているようだ」

 槙田が今回の作戦に関する説明を開始した。今のこの桐島との初仕事になるが、会ってその日に随分と難しい任務となる。寧ろ、この任務の成功を功績として、桐島の存在価値をアピールする目的があるのかもしれない。

「他にも応援はあるの?」

「ない。俺たちだけで何とかする」

 千野の質問に槙田がきっぱりと答えた。言いながら自分でも中々の無茶苦茶加減だと思っていた。
 一瞬誰もが押し黙ったが、沈黙を破ったのは桐島だった。

「救出人数は?」

「約50名」

「多いな。救出作戦は今回が初めてか?」

「いや、1回失敗しています。合流したが戻ってこれていない」

「ああ、なるほど」

 まぁ、そのおかげで持ち堪えてはいる。奪還という事は、合流後に敵を総攻撃しなければならない。その総攻撃で状況がひっくり返ることなくこちら側が劣勢な状況下というわけだ。今回、それと同じ事をしようとしている。是が非でもひっくり返さなければ全滅するだろう。

「時間の猶予は?」

 一が言う。

「今晩、奇襲があればアウト」

 槙田の言葉に千野の顔が引きつっていた。尚は不安げにきょろきょろと皆の様子を窺っている。「生きて帰ってこれるの?」と、言いたいが言えない。アレクセイはしかめっ面なまま、一言も喋らなかった。

「後の説明は移動中に行います。出発は15分後です」

 そう言って会議を打ち切ったのは水無瀬だ。時間がない。
 直ぐさま席を後にして、誰もが準備へととりかかった。
 これも寺島さんが口にしていた、ネフィリム計画の一部なんだろうか。昨日までとは別の世界の入口に立っているような気分だ。
 槙田は自分がどこに立っているのか分からないような気分になっていた。自分が成し遂げる事がどんな結果を導くのか、嫌な不安感がまとわりついて離れない。


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美雨

Author:美雨
オリジナル小説・詩の下書きblog
「神様は賽を振らない」の連載開始。
※物語の特性上、一部不快(グロテスク/残酷)に思われる表現があります。
※作品の転載・お持ち帰りは禁止です。何かで使用されたい場合は、事前にお声かけください。歓迎★
※詩を歌詞として曲などで使用していただけるかた募集中。また、その逆も募集中です。

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