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神様は賽を振らない 第4章 3

>>03

 建物。雰囲気まで、自分が居た頃と大して変わらないな。
 千野はあたりを見まわしながらそう思った。槙田班はGC研究養護施設へと来ていた。水無瀬の報告によるとA館が襲撃を受け、グールは全滅。ただ、地下の研究施設に逃げ込んだ人間に生存者がいたという事だった。だが、現地に到着すると状況は違っていた。その事がわかるのはまだ先の話だが……。
 銃を構えながら、入口から中へと入る。セキュリティは死んでいた。高圧電流も遮断されていた。誰でも中に入れるような状態になっていた。抉じ開けたり、無理やり押し入った形跡は見られなかった。敷地内に入ると更に同じようなフェンスに覆われた入口が現れる。そのドアも同じ状態だった。
 内側からキーが解除されているとしか思えない。千野は半開きになったドアを押し開けながらそう考えていた。

「襲撃から何時間経った?」

 槙田が水無瀬の方を向いて言った。水無瀬が時計を見ながら答える。

「3日と7時間と言ったところでしょうか」

 槙田班が要請を受けたのは、地下に逃げ込んだ研究員達のの救出だった。

「11ゲート東に人員が割かれて、こっちは手付かずってこと?」

 アレクセイがそう言いながら辺りに気を配っている。同類の気配(臭い)をそこら中に感じル為、気が散る。

「もしかして、こっちの状況の把握はあの映像と内部との通信だけ?」

 一が難しい顔をしながら言う。それを見て、千野は嫌な予感がした。一がこんな顔をする時は、ろくな事がないからだ。
 建物の入口へと到着した一行は、中から漂ってくる血の臭いに胸がざわつく。

「……手が空いているグール対の班が無かったとかで、俺達が一番乗りだ」

 槙田の話を聞きいて相変らず無茶苦茶させるなと思った。
 ドアノブに手をかけたところで、千野はふと視線を感じて急に背後を振り返った。

「どうかしたか?」

 そう槙田に言われたが、感じた視線の正体は解らなかった。
 気のせいか?
 そうは思ったものの、滅多にそんな勘違いはしない事から千野は怪訝に思った。

「……いや」

 そう口にしつつ、もう1度確認した。けれど、特に何も見つからない。

「こっちよりB館を先に確認すべきじゃない?」

 一がまた声を上げる。槙田のやり方に口を出すことは珍しい事だ。

「わかった。そうしよう」

 槙田は一から何か感じとったのか、あっさりと彼の意見を採用した。
 千野は手をかけていたドアノブから手を離し、歩き出していた他のメンバーの後を追う。

「今回尚が留守番なのは、この前の事件のせい?」

 先頭を歩いていたアレクセイが、前を向いたまま言った。

「まぁ、そうだ」

 それに後方から槙田が答える。

「今後、子ども絡みのヤマの場合、尚は留守番って事になってる」

「……そうなんだ」

 自分が緊急搬送されている間に、尚に何があったのか、千野は報告書通りの事しか知らない。グールと交戦中に気を失った。ただそれだけだ。人数が少なくなってしまうが、仕方がない。千野は特に何の疑問も持たなかった。
 A館とB館にさほど距離はない。2重フェンスの内側にある2棟の建物の真ん中には、2つを分ける様にまたフェンスが設けられている。B館のグールが建物外に姿を現すことは稀だ。入ってから次の施設に移動になるまで、ほとんどのグールが外へ出る様な事はない。それとは対照的にA館は中庭を使用することが許されている。フェンスの中であればかなり自由がきく。
 千野がA館に入っていた間は、1度もB館のグールを見かけることがなかった。

「変だな」

 フェンスを越え、B館入口まで300メートルと近づいた所で呟くようにしてアレクセイが小声で言った。

「警戒して」

 続いて一が通達するべく口にする。千野もさっきと同じような視線をまた感じていた。互いに背後を守るようにして入口へと向かっていく。
 1人とは思えない。最低でも2人はいるんじゃないか?
 千野は直感的にそう予想していた。隠れられるような場所はそうない。目星をつけて、その場所を重点的に警戒しながら進む。
 アレクセイがドアノブへと手をかける。最悪な事に、開いていないハズのドアは、ココも同様に開いた。中は静まり返っている。

「どういうこと? 何でこっちも開錠されてんの?」

 アレクセイが苛立ったようにそう口にすると、それを聞いた槙田が舌打ちをした。

「わからないが……、だとするとかなりヤバイな」

 ドアが開いているという事は、B館のグールが放出された可能性が高いという事だ。

「研究員の救出を最優先とする」

 まずは生き残っている研究員達から話を聞かない事には作戦も立てられない。槙田の言葉に全員が来た道を戻って行く。
 フェンスまで戻ったところで、一が開きっぱなしになっているドアをくぐる。それに続いて槙田、水無瀬と通ろうとした時、千野は視界の端で何かが動くのを捉えた。それは凄まじいスピードで自分たちの方へと向かってくる。
 千野は向こうかがへと押し込むように水無瀬の背中を押した。隣に居たアレクセイが直ぐさまフェンスのドアを閉め、塞ぐようにしてその前に立った。急に背後から強く押された水無瀬は、向こう側で地面へと倒れ込んでいるが、そんな事を気にしている場合ではない。
 スピードからして普通の人間の類いではない事は明白だった。千野が発砲し、それを避けるようにして人影が宙へと飛び上がった。一瞬、相手と目が合う。眼が真っ赤な少年は、血で汚した口を歪めて笑った。
 更にもう1人、駐車してあった車の影から向かってくる。それを観察しているグールが数名。数えきれない。千野は目の前の少年に発砲しながら、この調子で撃っていたら弾切れになる事を考え、自分も地を蹴った。

「退けよ、あんたにも分けてやるから」

 そう言った少年の言葉を、聞かなきゃよかったと思いながら腕を掴む。たいして戦闘能力は高くない。集団で来られない限りは対処できる相手であることは直ぐに解った。そのまま地面へと叩きつけようとしたが、少年は何とか体勢を持ち直し手をつきながら着地した。千野は少年の頭上から自らの凶器になった爪を振り下す。少年は地面を転がるようにしてそれをギリギリ避けた。
 千野は背を向け逃げようとする少年の後頭部を目掛けて発砲。命中すると、少年は足を縺れさせるようにして地面へと倒れ込んだ。

「誰か来いよ! オレひとりじゃムリだって!!」

 千野が声のする方を振り返ると、片目を潰された少年が血を垂らしながらアレクセイの攻撃を必死で防御しながら叫んでいた。
 その呼びかけに応えた5人が千野とアレクセイの方へと駆け寄った。直ぐに千野を挟むようにして両脇に少年と少女が到着し、双方から鋭利な爪が首元を狙う。
 千野は双方の腕を絡み取るようにして押しのけると、後方から殴りかかろうとしていた少年に回し蹴りを食らわせた。回転するようにして地面に落下した彼を、その他2名の少年の攻撃を避けながらアレクセイが射殺した。
 少女は千野の顔面を殴りつけようとし、少年は足元を狙って蹴ろうとしていた。千野は飛び上がり少年の攻撃をかわすと、少女の拳を避けながら彼女の腕をとった。そのまま反動を利用して彼女を放り投げるようにして少年へと投げつける。
 重なるようにして倒れ込んだ2人をそのまま押さえつける為に踏みつけ、千野は頭へと銃弾を撃ち込んだ。
 アレクセイの方も2名の少年のうち1人を射殺、もう1人を首の骨を折り殺していた。

「期待してなかったけど、本当に使い物にならないのね」

 急に女の声がして、班員全員の視線がそちらへ向かう。今までの少年達とは服装も年齢層も違うその女は、明らかにこの研究所の関係者とは違って見えた。白いタイトなズボンに、白いワイシャツを着ている。短い髪は金色だった。年齢は20代前半といったところだろうか。千野達側ではなく、女はフェンスの向こうに現れていた。
 スイッチが入った様に眼が紅くなり、低い姿勢で槙田へと走り込んでくる。
 千野とアレクセイとはフェンスを通り抜けようとドアに手をかけるがロックがかかっていた。

「開かない!」

 アレクセイが叫ぶ。
 千野はアレクセイを押しのけるようにして焦りながらガチャガチャとドアノブをまわす。

「どうなってんだよ、クソッ!……うぁ!!」

 無理やり開けようとして高圧電流を食らい、手を離した。
 セキュリティが急に復活しやがった。
 こうなると、向こう側へ行く手段がない。無理矢理開けようとしても電流で失神、もしくは瀕死の状態に陥るだけだ。
 女は側転を捻り、そのままの勢いで前転飛びをしながら槙田に右踵落としようとしたところで一に邪魔をされた。走り込んだ一は行き良いよく右膝蹴りをするが、女はそれを左手でガードした。

「他に道はないの?」

 向こう側の様子を見ながらアレクセイが千野に向かって言った。一1人で2人を守るのは難しい。アレクセイも千野も、女の身のこなしからして、今までの少年たちの様なレベルの強さではないことが解っていた。そのせいで余計に焦りを感じている。

「地下は繋がってるが、そっちもセキュリティでロックがかかってる。これじゃ逃げ場もない」
 いや、待てよ。向こうの扉は閉じたか? 半開きのままだったような気がする。ただ、その中が本当に安全なのか保障はない。本当に中のグールは全滅してるのか?
 いくら人間的な感情を持ち合わせた、人を殺すことに抵抗があるグールだったとして、あの血の海の中に居たら正気を失う。人間性を失い、ただのバケモノになる。そのバケモノが中にまだ残っているとしたら、今度こそ手だてが無くなる。槙田と水無瀬が殺される確率は高い。
 だけど、今この状況で他に選択肢はない。

「建物内に入れ!」

 千野は槙田達に向かって言った。2人は銃を構えてはいるが、早いグールの動きが殆ど見えていないような状態だ。
 一瞬千野の方を槙田が見て、「いくぞ」と水無瀬に声をかけた。言われた通り建物の入り口の方へと走っていく。
 女が一に右中断回し蹴り、そのまま流れる様に左中断回し蹴りを放つ。一気に伸ばされた足が履いていたハイヒールの先が、身構えていた一の手の甲を僅かに掠った。切れて少量の血が出る。一は牽制する様に相手の左膝に下段右足刀をする。予想通りそれは避けられたが、間を置くことなく左右左と掌底突きをするが、その攻撃も捌かれた。

「どう思う?」

 アレクセイが視線はフェンスの向こうを見たまま呟くように言った。

「Lの僕ほどじゃない」

 一が女との戦闘に耐えうるかを聞いているのだと判断した千野が答える。体力的な問題が一番心配だった。一はこの班の中で一番経験が豊富ではあるが、体力は一番少ない。

「セキュリティのことといい、あのグーラはここを襲撃したうちの1人かな。それとも1人で全員をやったとか?」

「中からかなり血の匂いがした。1人でやったとしら、もっと血まみれになってそう。白いのにあんまり汚れてないし」

 そう言ったところで、槙田達が建物の中へと消えて行った。ドアが締まるのを見て、後は祈るしかないなと千野は思った。
 一の左掌底は女に間合いを外され、相手に右フックが宙を切る。それを身体を右にひねりながら避けた一は、その勢いを利用し蹴り上げるが受け止められた。しかし、身体を縦にして相手の間合いに入り込むと、女の左中段蹴りの引きが遅くなる。それを受け止め、女が一の左手を掴もうとするのを下から斜め上方向に肘打ちを入れた。

「よし」

 それを見ていた千野は思わず声が漏れた。
 一は更に脇へと身体を入れ相手の態勢を崩す。それでも女は身体を後ろに引き、即座に蹴りに映る姿勢を作る。女が左中段足刀を繰り出したところで、一はその軸足を狙い引っ掻けるように蹴りを入れる。右裏打ちを放つがこれも受けられた。女の右突きをかわし腕を組み合わせるが、予想以上に相手の力が強かったのか、地面へと投げられる。
 一は直ぐに立ち上がるが、体勢を崩したところに女の回し蹴りをする。それを避けるが、女は攻撃を外された右足を地面につけた後、腰のバネと足の力でまた蹴り直した。一はまた態勢を崩している所を殴られ、地面を転がった。
 倒れ込んだ一に女が襲い掛かる。
 まだ構えていない一は、上段回し蹴りで更に態勢を崩された。女はその右足で下から突き上げるような足刀を放ち、一は吹っ飛ばされた。

「大丈夫だよな?」

 アレクセイが呟く。千野は何も答えなかった。





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美雨

Author:美雨
オリジナル小説・詩の下書きblog
「神様は賽を振らない」の連載開始。
※物語の特性上、一部不快(グロテスク/残酷)に思われる表現があります。
※作品の転載・お持ち帰りは禁止です。何かで使用されたい場合は、事前にお声かけください。歓迎★
※詩を歌詞として曲などで使用していただけるかた募集中。また、その逆も募集中です。

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