1012345678910111213141516171819202122232425262728293012

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

神様は賽を振らない 第3章 ⑤

>>05

 面会記録も、内田 秋生宛ての手紙も、調べるのにさほど時間はかからなかった。彼の元クラスメイトや友達は、彼が刑務所に居る事を知らない。転校したという事になっている。面会者は月に数度母親が来る程度で他にはいない。しかも、1度も母親と面会はしていないようだ。手紙もクラスメイトからの手紙を母親が転送したもので、初めの頃に何通かはあったものの、その後は音信不通になったようだった。
 凶悪な犯罪を犯した者ほどファンレターが多いと言われているが、彼の場合犯罪者として一般に認識されていないお蔭で孤独だ。父親は1度も現れていない。
 3人は面会の様子を監視、管理する為の映像管理室へと移動した。内田 秋生は3人が会った面会室に留まらせている。相手の様子を伺いながら、秋月が集めた情報へと目を通す。
 面会の様子はカメラで撮られ録画されているが録音はされていない。代わりに筆記録が遺されている。

「誰とも繋がってないことを証明してるみたいじゃない?」

 アレクセイが内田に送られてきた手紙を読みながら言った。
 内田が犯人を知っているとするなら、最低でも1度はコンタクトを取っ手いるはずだ。内田と外部との接点は限られている。だが、その鍵られた接点で浮かび上がってきたのは母親ぐらいだった。彼の母親の事ももちろん調べたが、カメラに映っている女性と同一人物ではないことが映像から証明され、更にアリバイも立証された。
 犯人は彼に支配され、コントロールされている人物だと槙田は想像していた。しかし、そららしい人物は浮かび上がってこない。
 公安で事件を担当していた刑事が言っていた通り、槙田も犯人はグールではない人物、または突然変異のグールであると考えている。
 グールである内田の指示に従って行動しているから、グールっぽさが出ているのではないか。どちらかと言えば、犯人は前者のグールではない人物だと思っている。槙田のプロファイリングによれば、虐待による被害者、子供の頃に何かしらの問題があった者が候補としてあがる。

「あいつはまさに支配者って感じだね。力を振るって屈服させるのが大好きで、衝動を抑えきれないんじゃない? 人を操ってコントロールしたりするのが得意な印象を受けたけど、その割に人との関わりを避けているのは、父親への不信感が原因かな」

 アレクセイが頭の後ろへと両手を回して組むと、深く椅子へともたれて足を組んだ。長い脚が放り出される。
 短い面会時間や、手紙のやり取り、監視された限られた時間の中で、相手を殺人にまで導くなんて事が可能だとして、特殊な環境が特別さに変わり、何か試練があるほど突っ走るようになる。そうやって、エスカレートしていった?
 そんな事を考えながら槙田は腕を組み、大きなため息を付いた。

「犯人の事はどうやって従わせてるんだろうね」

 アレクセイが言う。槙田と同じことを考えていたようだ。

「やっぱり、こいつが犯人に殺させてると思うか?」

「思う」

 アレクセイはすんなりとそう言って頷いた。
 だよな、と槙田は思った。
 内田は、塀の中に居ながら、塀の外の人間を殺している。

「秘密の共有。2人を特別にする為の行為。そんなところじゃないか? 内田は操る事を楽しんでいるんだろうな。今のこの状況も、楽しんでいるのかもしれない」

 槙田は吐き捨てるように言いながら、胸ポケットの煙草へと手が伸びる。

「もしかして、さっき『彼女』だってもらしたのはわざとだったりする?」

「多分な」

 そう返事をして椅子から立つと、槙田は部屋の外の廊下へと向った。煙草を吸うためだ。直ぐ近くに喫煙所がある。
 喫煙所のドアを開けて中に入ると、槙田は口に1本ほ煙草を咥えた。彼以外に人はおらず静かだった。  内田のいいように事が進み続けている感じが拭いきれない。彼の遊びに付き合わされたまま、思い通りに動かされれている。
 槙田はライターを手に握ったまま、煙草に火を点ける事なくぼんやりと一点を見つめたまま動かなくなった。
 先を考えろ。
 先だ。
 彼は何をしようとしている。その為にどんな行動に出る。協力すると言ったという事は、続きがあるという事だ。彼の遊びは終わらない。
 イラつく。イラつくこと自体、相手の思うツボだと言うのに。
 さっきの内田の笑った顔が脳裏をよぎった。槙田は咥えていた煙草に火を点けようとしてその手を止めた。
 ここでこうやって悶々とするより、内田を揺さぶった方が有意義じゃないか? 彼に勝たなければ、解決に長い時間がかかりそうな気がする……。
 槙田は煙草を箱へと戻し、元居た映像管理室へと足早に戻っていく。
 結局槙田とアレクセイは、1時間前と同じ場所で、内田 秋生と面会を再開した。たださっきと違うのは、2人と刑務官の他にもう1人増えていることだ。根回しのいいことで、弁護士が到着していた。

「また戻って。言った通りでしょ?」

 内田 秋生は得意げにそう言って弁護士の方を見た。

「どんな容疑がボクにかかっているか説明してもらえますか?」

 こっちを挑発するかのよう言う。
 弁護士がいるような状況では、話を聞き出すのは難しい。とんだ邪魔が入ってしまったと槙田は思っていた。もちろん、この弁護士にも今の事件について詳細を話すことはできない。
 どうしたものか……。
 槙田は顎に触れながら話す内容を考え、弁護士に向かって話し出す。

「……彼が、最近起きている連絡殺人の共犯だと見ています」

「私なしで質問したんですか?」

 槙田の言葉に、明らかに戦闘態勢の弁護士が言い返した。

「ボクの意思で答えた」

 そこに割って入るように、内田が言う。
 こうなったら、大きく出るしかない。この状況を覆さなければ、どうにもならないと槙田は考えた。
 槙田は誰にも気づかれないような小さな深呼吸をして口を開いた。

「共犯者がいることは間違いない。彼女の目星はついている。今協力しないなら、独房行きだ。誰とも関わり合えなくなるぞ。チャンスは、この1度きりだ」

 槙田は彼の眼を覗き込む様に言った。
 彼が自分の満足感、快感を得る為には、誰かと関わる事が不可欠。1人では得られないものだ。それを手放せば、生き地獄を味わう事になる。
 彼は、我慢が出来ない。抑制が効かないのだから。

「どうする?」

「答えないで」

 槙田の言葉に直ぐさま弁護士が声を被せるてくる。

「そんな取引に乗るわけないでしょ」

 椅子に座った槙田の横に立っていた弁護士に、上から言葉を浴びせられる。が、それを遮るように内田が口を開く。

「黙ってくれないかな」

 まさかそんな事を彼が言うとは思っていなかった。槙田は驚いて弁護士の方を見た。これでは、彼女がただのお飾りのようだ。呼ぶだけ呼ばれて、ろくに仕事をさせてもらっていない気がする。
 言われた通り口を閉ざし、弁護士は困った様に彼の方を見ていた。

「何が知りたいんですか?」

 弁護士を気にも留めず、内田が槙田に向かって言った。
「彼女の名前。それと引き換えにそれ相応の対処をする」

「白状しろと言われてもな。ボクのマネをして女が人を殺しまくってる? しかもボクが共犯? どうやってそんなことできるの?」

「秋生さん、黙って」

「もしかして、ボクに言われたから殺してるとでも言いたいんですか? そんな現実味のないような話されてもなぁ」

 弁護士が話すのを止めたのにも関わらず聞く耳を持たず、小首を傾げながら彼は話を続けた。それをいい事に、槙田も続ける。

「秘密を共有してるだろ?」

「だから、ボクの言うことを何でもきくって言うんですか?」

 内田が今度は笑い出した。冗談を聞いているとでも言うように。
 それでもいい。何か引き出せるなら、彼の遊びに付き合ってやる。そう思いながら、槙田は耳障りな笑い声を我慢して平静を装った。

「依頼人と2人にしてください」

 弁護士が槙田に向かって言う。これ以上内田の好き勝手させていられないからだろう。
 槙田は席を立って、彼女に「どうぞ」と言った。

「捜査、うまくいってないんですね。平気なフリしてるけど、本当は焦ってる」

 内田が槙田に向かってそう話しかけてきたが、槙田は彼の方を振り返ることなくそのまま無視し、一旦面会室を出た。
 アレクセイは後ろの方でやり取りを見守っていただけで、今回も口を開く事はなかった。
 そのまま2人で別室の映像管理室に向かう。そこでカメラに映された弁護士と内田 秋生が話をしている様子を、リアルタイムで見せてもらえるよう刑務官に頼んだ。
 弁護士がどう出るのか、彼がどんな対応をするのか槙田は見たいと思っていたからだ。
 2人の会話を聞く事は秘匿特権がありできないが、映像を見ることは許された。

「彼は支配される事を嫌うから、相手が誰であろうと取引なんてしたくないはずだ。もちろん、弁護士も例外じゃないはず」

 槙田が画面越しに2人の様子を観察しながら言った。
「なんか変じゃなかった? 弁護士って、もっとはっきりしたスタンスとるよね。話すのダメって言ってたけど、止められてなかったし。ちゃんと止めないと、彼にとって不利益になるのに」

 アレクセイが言った通り、確かに変だと槙田も思っていた。その後の映像でもそれは浮き彫りになっている。2人は10分程話して、別れた。

「もう1回巻き戻して見たい」

 そうお願いして、槙田は同じ映像をもう1度繰り返し見せてもらった。
 見返してみても、弁護士の彼女の表情、動きは、彼に服従しているように見える。
 部屋には刑務官が2人居り、それぞれ仕事をしている。彼等に頼むより秋月を頼った方が話が早そうだと思った槙田は、一緒に映像を見ていた秋月へと耳打ちした。

「至急調べて欲しい事があるのですが」

「うん? 何ですか?」

 秋月も小声で返した。

「面会記録見れますか?」

 秋月は頷いて、手元にあったパソコンを弄りだした。
 槙田は秋月がディスプレイに表示させた面会記録から、弁護士の来訪日を調べた。

「事件のあった日の翌日には、必ず来てますね」

 秋月が声に出してそう言った時、鳥肌が立った。

「正面ゲートに電話、今出てった弁護士を止めろ!」

 槙田は刑務官に向かって急に叫んだ。急を要している事を感じ取り、刑務官の1人が慌てて電話をかけた。
 アレクセイは槙田がそう叫び始める頃には部屋を飛び出していた。刑務官たちには聞こえていなかっただろうが、聴覚が優れている彼には小声での会話が全て聞こえていたのだろう。槙田が導き出した答えにも気付いているのかもしれない。
 槙田もアレクセイの後を追って部屋を飛び出し走った。槙田はアレクセイにまるで追いつくことができなかったが、そんなアレクセイでも弁護士には追いつけなかった。
 気付くのが遅かった。もう少し早い段階で確信を持てたら……。
 槙田は短い呼吸を繰り返し、前のめりで項垂れる様になりながら地面を睨めつけた。

「3分ぐらい前に、車で駐車場を出て行ったって」

 出入り口で待っていたアレクセイが軽く息を切らしながら言った。玄関から先に1人では出れない。単独行動は問題になる。

「彼女をわざわざここに呼んで、ボクたちに会わせたのもわざとかな。あいつはゲームでもしてるつもり?」

 アレクセイよりもずっと息を切らしながら、横っ腹を抑えて槙田は言った。

「……もし…かしたら、今……次の殺し…指示…したのかも……」

 だとしたら、本当に最悪だ。





にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村


Web小説 ブログランキングへ
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

コメントの投稿

secret

top↑

comment

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

top↑

プロフィール

美雨

Author:美雨
オリジナル小説・詩の下書きblog
「神様は賽を振らない」の連載開始。
※物語の特性上、一部不快(グロテスク/残酷)に思われる表現があります。
※作品の転載・お持ち帰りは禁止です。何かで使用されたい場合は、事前にお声かけください。歓迎★
※詩を歌詞として曲などで使用していただけるかた募集中。また、その逆も募集中です。

最新記事

カテゴリ

リンク

ブロとも申請フォーム

人気ブログランキング

にほんブログ村

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。