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神様は賽を振らない 第3章 ①

case.03 傀儡の人

>>01

 ドアを開け部屋に入ると、アレクセイが手元の資料を見ながら椅子に座っていた。彼の斜め前に座っていた女性が、使っていたパソコンから視線を上げて槙田のことを見る。
 本当に彼女がサブで入るのか……。
 槙田は事前に通達はあったものの、実際に見るまでは信じられないところがあった。異例だが、今回のヤマの大きさから言うと、納得かもしれない。

「ハル君、お久しぶりです!」

「ご…無沙汰してます」

 相変らずと言うか、変わってないと言うか……。
 槙田は下っ端の頃、彼女と同じチームで働いたことがある。彼よりも年上なのは確実だが、童顔なせいもあって年齢不詳。到底警官とは思えないような、ふわふわ感のある出で立ちをしている。昔よりフリルやリボン的なものは少なくなったが、合コンにいそうな女子大生みたいだなと槙田は思った。それがイタくないっていうのが、彼女の恐ろしいところだ。

「はるくん……」

 アレクセイがそう呟きながら笑いを噛みしめていた。隠しきれていない。
 いっそ笑えよ。声に出して!
 槙田はそう思いながら冷たい視線をアレクセイへと送った。そんな風に槙田を呼ぶのは彼女ぐらいだ。彼は元嫁にだってそう呼ばれた覚えはない。
 彼女の名前は秋月 凜(アキヅキ リン)捜査支援分析センター、副長。今回、野々宮 尚の代わりに配属された。尚は検査と様子見で長期休暇中だ。その他のメンバーは12ゲートへの増員、または交代で休暇を取っている。

「えー、さっそくはじめますね」

 槙田は咳払いをしてそう言いながら椅子へと座った。
 普通にやりずらい。
 それが槙田の素直な感想だった。

「はーい」

 気の抜けるような、可愛い返事が返ってきたが、槙田は気にせず会議を続ける。いちいち彼女の個性に反応してしまっていたら日が暮れてしまう。

「この2週間で男性が3人。深夜のホテルで刺殺された」

「3人につながりは?」

 アレクセイが言う。彼が手にしていた資料には、伏せてある部分が多すぎる。

「警視庁高官」

 その事実を知らなかったアレクは、驚いたようにそう答えた槙田を見た。

「ホテルは同じじゃないんですよね。みんな1ゲートにあるホテルだけど、高官のほとんどは1ゲートに住んでるし出ることもないから、1ゲート内のホテルを使用はつながりってわけにはならないですよね。わたしだってたまに使うし」

 パソコンでホテルの位置を確認した秋月さんが、頬に手を当てて首をかしげた。

「全員下着姿で、衣服は身に付けてなかった」

「女に誘われた?」

 その状況を思い浮かべると、そう考えるのが妥当だろうな。
 アレクセイが言った言葉に槙田が頷いて続ける。

「2軒のホテルの防犯カメラに、同じ女の姿が映っていた。調べたところによると宿泊客ではなく、身元も不明だった」

 数時間前に要請を受けて、現在槙田が知っていることはこれぐらいだ。自分よりも上官の秋月は、多少なりとも多くの情報を開示されているのかもしれないと槙田は思っていたが、そういうわけでもなさそうだった。

「1ゲートでこんな事件が起きてるのに、全然騒ぎになってないね」

 アレクセイが不思議そうに言った。元々この案件で基本的に動いていたのは公安だったが、相手がグールである可能性が示唆され、グール対の槙田の班へ回ってきた。とにかく秘密裏に事件の解決をするようにと、上から念を押されている。

「ならないように細心の注意をしている。この国で1番安全だとされている1ゲートで、しかも本庁の高官が殺されただなんて知れたらパニックに陥る。警察の信頼、更には国の信頼は失墜。そうなる前に解決しなきゃならない」

 この重要案件の為に、久遠警視正直属の命令で秋月がこのチーム加わった。少ない人数で内密に、速やかに対処しなければならない。それにしても、さすがに3人はきついものがある。いつものメンバーで動けたらまだよかったが、その許可は下りなかった。その代わりにと差し出されたのが秋月だった。確かに優秀な人ではある。

「急がないと、4日周期で殺してます」

 秋月が眉間に皺を寄せて言った。犯人は4日に1回のペースで食事をしているようだ。しかも、人を選んで喰べている。一定の役職以上の者には、犯行予告が届いていると警戒するようには通達された。そこまでの役職についていると、流石に3人も死んでしまっては事実が耳に入っている人もいるかもしれない。

「次の犯行まで1日ってことか。でもこれ、3人でなんとかするの?」

 アレクセイが呆れたように言った。確かに、無茶だと言える。槙田は真顔のまま答えた。

「そうだ。何とかする」

 そこで、秋月が「はいっ」と言いながら手をあげた。

「とりあえず、担当していた公安の坂本(さかもと)刑事呼んであります。そろそろ来るはずです」

 え? 公安の刑事が態々?! とりあえず話を聞こうとは思っていたが……。
 槙田は秋月の言葉に自分の耳を疑った。

「ここに呼んだんですか?」

 信じられず聞き返す。

「はい。ここに来てくれます」

 まじかよ。未だかつてそんな事例1度もないぞ。
 槙田は驚いた。だいたい、他の課の者がここの建物に近付く事さえほぼない。元々は警視庁内にこっそりと設けられていたこの課だが、危険性を危惧され結局は別の建物へと移動になったぐらいだ。この建物がグール対第1ゲート本部の建物である事を知っている警官は、寄り付かない。
 それでもまだ何かの冗談じゃないかと考えている間に、ドアをノックする音が聞こえた。槙田が返事をするとドアが開き、男が入ってきて「坂本です」と名乗った。
 本当に来た……。
 槙田はそんな事を考えていた事を覚られない様に顔を作り言った。

「態々ご足労いただきまして恐縮です」

 立ち上がり、槙田は坂本刑事に椅子を差出した。

「いえ。秋月さんの頼みですから」

 坂本刑事はニコリともせずにそう答えた。槙田がこの班の指揮を執ってはいるが、彼女の方が階級も上で、やり手として有名だ。
 坂本刑事ははアレクセイの方をチラリと見たが、槙田に促された椅子へと座った。

「金品は奪われていませんでした。物取りの犯行ではありません。ただ、腹を裂かれ内臓はとられています」

 彼は唐突に本題へ入った。前置きは不要と考えた様だ。もしくは、できるだけ時間を省き早くここから出ていきたいのかもしれない。
 気に留める事なく、槙田達3人は坂本刑事の話に耳を傾けた。
 この事件は当初、猟奇殺人として捜査されていた。人の身体の中身だけ喰べるグールはあまりいないからだ。

「現場は高級ホテル?」

「はい。部屋はスイート」

 アレクセイの質問に坂本刑事が無表情で答えた。

「さすが、偉い人たちはお金を持っているね」

 真顔のままアレクセイが言う。

「ホテルはグーラにとって、ターゲット探しに最適です」

 秋月がディスプレイに映し出した各ホテルのHPを見せながら言った。

「でも、人目に付きやすい」

 そうアレクセイが言った通り、高級ホテルだと眼が行き届いている分、逆に人目に付きやすいと言える。

「現場に痕跡は?」

 今度は槙田が口を開いた。

「血痕は漂白剤で拭きとられてます。凶器、指紋は残されていませんでした。毛髪も見つかっていません」

「……珍しいな」

 坂本刑事の話しに、槙田は思わず思っていたことが口を突いて出た。グールが態々痕跡を消すようなことをするのは稀だ。

「坂本さんは、何か気付いた事がありますか?」

 槙田の質問に、言うのを多少迷ったのか、少し間があってから坂本刑事が口を開いた。

「……専門外ではありますが、私はそもそも、グールの犯行による事件なのか疑問です」

 確かに、辻褄は合うかもしれないが証拠らしきものもない。喰われたとされている腹も、直接噛み付いているわけでもなく、犯人の唾液も採取できなかった。検査をしてグールであるか調べる事も出来ない。
 多かれ少なかれ、嫌な気持ちにはなっただろうが、彼は自分達にヤマを奪われたと思って嫌味でこんな事を口にしているわけでもないと槙田は思った。
 坂本刑事に話を聞いた後、取敢えず槙田は秋月と2人でで3件目の事件現場であるホテルに行くことにした。アレクセイは本部で待機しながら休憩だ。





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美雨

Author:美雨
オリジナル小説・詩の下書きblog
「神様は賽を振らない」の連載開始。
※物語の特性上、一部不快(グロテスク/残酷)に思われる表現があります。
※作品の転載・お持ち帰りは禁止です。何かで使用されたい場合は、事前にお声かけください。歓迎★
※詩を歌詞として曲などで使用していただけるかた募集中。また、その逆も募集中です。

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