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神様は賽を振らない 第1章 ⑤

>>05

 13のゲートによって区分されたこの国は、それぞれのゲートにいくつかの詰め所がある。さらに各ゲートに4ヶ所警察署と名づけられた、基本的には見張り場のような署が設置されている。署には一定階級以上の警察官以外が存在を知らない、地下通路がある。
 通路に続く隠し扉を開ける為には、解除するコードと、解除する本人の認証コードの入力が必要になる。その扉が開錠された場合、自動的に本庁へ通達が行き記録も残る。
 この隠された地下通路は隣り合わせたゲートへと続いていて、地上に出ることなく最短で隣のゲートまで移動することができる。使用が許されている人物も限られ、使用される事も滅多にない。
 一、尚、槙田の3人は、その地下通路を専用車両で移動中だ。
 尚は兄の様子から、何となく一が初めてこの通路を使っているわけでもなさそうな気がしていた。
 途中、水無瀬から槙田に連絡が入った。本庁に連絡もなしに地下通路を使用している件で槙田に直接連絡を取ろうとしたものの、ココは携帯電話は電波が届かずコンタクトが取れなかった。その関係で水無瀬さんの方へ本庁から連絡が入った。無線は地下でも使用可能な為、2手に分かれている班の双方では連絡が取ることができた。ただこの無線もそこまで遠くまでは届かない。本庁のある1ゲートまでは到底届かない。結果、間に水無瀬を挟み本庁と槙田が連絡を取るかたちになっていた。
 2人の会話内容は、全員が無線によって聞いていた。むしろ聞かせるために2人だけの直通からオープンへと切り替えられていた。態々別々に説明する時間を節約する為の槙田の処置だ。
 12南署は本部から応援要請をSATに通達するように連絡を受けていた。通達後、15分もあれば現場に応援が到着するハズだった。それにも関わらず、応援は20分待っても来なかった。連絡もなく遅れている事を不審に思った槙田は、12南署へと直接連絡を取った。しかし電話の相手は「もうすぐ到着します」の一点張りで、訊ねた応援部隊への連絡を取る為のコードも応えかった。相手の対応や様子は明らかにおかしかった。最終的に相手は名乗る事もせずに電話をガチャ切りした。
 槙田は、警官以外が応答するはずのない12南署の電話に、警官とは思えない人物が対応した事に異常を感じ焦った。12南署で何が起こっているのか、確認の仕様がなかった。
 彼は13南署で起きてしまった惨事との関連性も視野に入れて、最悪、12南署も13南署と同じような状況になっている、もしくはなろうとしている可能性があると考えた。
 こういった槙田の勘は、あまり外れる事がない……。
 犯人は逃走中で、まだわからないことだらけだ。相手にこちらの行動がバレないように、12ゲート内とは連絡を取らずに12南署へと移動中。それが今現在の状況だ。
 槙田は水無瀬に、今話した事を本庁へ説明するよう伝言を頼んでいた。
 槙田が前方の席に座り、尚と一はその後ろの方へとバラバラに乗り込んでいた。専用車両の席数はバス程度はある。

「到着したら起こすから、それまで寝ていろ」

 そう槙田に言われ、一と尚は其々仮眠をとる事にした。到着次第直ぐに戦闘になるかもしれない。体力を回復する為に睡眠は不可欠だ。一は一番後ろの席へと移動して長いイスへと横になった。尚はイスを限界まで倒してそのまま横になった。
 いざという時に、この身体が動けなければ意味がない。一は年齢と共に自分の身体能力の低下を感じ取っていた。今の年齢まで身体が持ったのは今回が初めてのケースだった。メンテナンスは定期的に受けてはいるが、それでも衰えは感じる。それで新しい身体へと鞍替えしないのは、人としては正しいのかもしれないが、兵器としてはどうなのか。その事に関しては、上層部の意見も割れている。最終的には、グール対最高責任者の意見が重要視され現状に留まっている。
 また、あの夢をみてしまうかもしれない。そう思いながらも、慣れたもので眠りは浅くても意識は直ぐに遠のく。脳裏にこびりついたあの記憶は、何故消される事無く残されているのか。その意味を聞く前に、そうさせていた人物は死んでしまった。


「着いたぞ」

 一は槙田の声で目を覚ました。夢の記憶は残っていない。一はもっそりと起き上がり、中々目を覚まさない尚を起こしに向かった。丸まるようにして眠っていた尚の身体を揺する。

「起きろ」

 そう言うとやっと目を見開いた。一よりずっと寝起きは悪い。起きろと身体に言い聞かせる様に、伸びをしながら豪快な欠伸をした。
 1時間半かからずに、12南署へと到着した。
 早々と槙田は車を降り、身に付けていた銃を取り出す。一も尚が起きた事が解ると直ぐに車から降りた。尚がパチパチと頬を叩いている音が聞こえていた。最後に降りてきた欠伸をかみ殺した涙目な彼女の手にも、既に銃が握られている。
 3人は地上の隠し扉へと続く階段を静かに上がって行く。

「……行くぞ」

 キーロックの前に立っていた槙田が振り返って言った。それを聞いて一と尚が扉の両脇へと張り付く。槙田はコードを入力すると、2人の後ろへと下がった。
 扉の向こうは12南署内になる。こちら側からだと扉は外開きだ。
 一気に緊張感が高まる。相手に待ち伏せされていれば、直ぐに攻撃が始まる。

「……だ、誰かいるのか!! 来るな!!」

 扉が開ききらないうちに、男の声が聞こえた。
 人の気配は1人。血の匂いがドッと流れ込んでくる。

「警察だ!」

 尚は大きな声でそう言いうと、転がるようにして室内へと飛び出していく。それに一も続く。室内の1階に居たのは男が1人。片手で銃をこちらに向けている。突然の訪問者に驚いているようだった。2人も続けて出てきた事で、更に男がパニクッている様に見えた。
 男が照準を尚に合わせるよりも早く彼女は動いた。瞬時に男の方へと駆け寄り、男が持っていた銃を床に払い落とす。背中の方へと腕を取り捻ると、男は痛みで声を上げた。床へと腹ばいにさせ、拘束する。
 一は落とされた銃を足で押さえつけながら、自分の銃を男へと向けていた。
 2階に人の気配は感じない。

「なっ、何が警察だ! 嘘つくなバケモノ!!」

 男が叫びながら身体をバタつかせる。振り払われることがないように、尚は力を弱めることなく自分の体重を乗せながら男を押さえつけた。一の銃口は男に向けられたまま動かない。
 男は見たところ、18歳ぐらいの未成年に見えた。

「嘘じゃない、警察だ。銃刀法所持で逮捕する」

 槙田が手帳を見せながら青年に向かって言った。

「は? どういうことだよ。こいつ等の目真っ赤じゃねーか!? どう見たって人間じゃねーぞ! 動きだって…」

「尚、手錠」

 青年が捲し立てるのを無視するように、槙田が尚に向かって言った。

「了解」

 尚は腰につけていた手錠取り外して、青年の手にかける。

「ふざけんな! 外せよ!!」

 男はそれでももがくが、槙田によって首根っこを掴まれるようにして立たされると、強引に近くあったイスに座らされた。

「1人か?」

 槙田さんも倒れていたイスを起こし、男の正面に座った。浅腰かけ、前のめりになって聞く。

「見てわかるだろーが。もう、オレしかいない。ここの警官が役立たずだったからな」

 青年は床に転がっている警官の遺体を見ながら言った。警官の遺体は3体ある。酷い暴行を加えられてはいるが、喰われている遺体はなかった。
 一は銃をしまい、青年から遺体へと注意の対象を変えた。よく見ると爪が剥がされていたり、指が切り落とされていたり、致命傷にならないような切り傷が多々見受けらる。暴行と言うより、拷問を受けたと言った方が合っている気がした。
 壁も、床も、血が飛び散り、血肉がべったりとこびり付いている。
 こんな部屋に何時間もいたら、普通なら気がふれる。青年には極度のストレスが長時間にわたってかかっているハズだが、遺体を怖がる様子も不快感も感じられなかった。

「さっき電話に出て切ったのは君か?」

「だったら何だ。お前らが本当に警察だって言うなら終わりだ。真知(マチ)が殺される! 今更来たって遅いんだよ!!」

 青年の口から出た聞き覚えのある名前に、皆反応する。

「マチって、都筑 真知(ツヅキ マチ)のことか?」

「……そうだよ。何で知ってるんだ?」

 槙田の言葉に、青年が困惑しながら言う。

『槙田警部、到着しました』

 急にイヤフォンから水無瀬の声がした。無線連絡だ。応援が到着後、彼女達もヘリで12南署へ向かっていた。外が急に騒々しくなる。

「ああ、入っていいぞ。制圧してる」

 槙田がドアの方を指差しながら尚の方を見る。彼女は「はーい」とゆるい返事を返しながら入口の方へ行き、ドアのロックを解除した。

「遅くなりました」

 程なくして水無瀬がそう言いながら、ノートパソコンや何かを持参して入ってくる。その後ろに見えたアレクセイも何かを持たされていた。千野も荷物を持ち室内へと入ってくる。
 水無瀬は床に転がった遺体を跨いで通り越すと、2つあったデスクの1つを動かし、せかせかと何か準備みたいなことをし始めた。アレクセイは13南署と同じように、また写真を撮りまくっている。
 千野は荷物を降ろしながら遺体を見て、『ここもか』みたいな顔をしていた。

「何だってんだよ。バケモノだらけじゃねーか」

 千野はそう焦ったように口走った青年に歩み寄ると、でこピンをした。
 そんな言葉はもう、言われ慣れている。

「黙れ、ガキが。てか、こいつ誰?」

 槙田と青年の間に立ち塞がるようにして立った千野が言った。

「千野、邪魔。アレクは一応2階を見てきてくれ」

「了解」

 アレクセイはカメラを首に下げ、銃を片手に2階へと向かった。
 邪魔と言われた千野は不服そうに腕を組みながらその場を離れると、一の方へと歩いて行く。

「で、誰だよ」

「まだ不明」

 一は千野にそう言い返して黙る。それはこれからわかるところだ。

「それで、都筑 真知はどうして殺されるんだ?」

 槙田が言った都筑 真知の名前に水無瀬と千野も反応を見せるが、黙って様子を窺っている。

「信用できない。お前らなんかに話すか!」

 青年は威勢よくそう言い放った。けれど、右足を小刻みに揺すっている。無力感があり、援助をしてもらいたい現れと言える。槙田はそれを感じ取りながら話を続ける。

「いいのか? 助けられるかもしれないのに。どうせ警察にバレたら殺されるなら、話した方がまだ助かる可能性があると思うけどな」

 槙田にそう言われ、青年は左下をじっと見ながら膝を揺らし続ける。
 しばらく沈黙になったが、その沈黙を破ったのは青年だった。

「……昨日の夜、お前等みたいなバケモノに襲われて、真知が攫われた。真知を殺されたくなければここに残って警官の代わりをしろって言われた」

 デスクの上には定期連絡についてのマニュアルが書かれたファイルが出されている。事の発覚を遅らせる為に、犯人がこの青年をここに残したという事らしい。

「君の名前は?」

「都筑 孝輔(ツヅキ コウスケ)」

 都筑 真知と同じ苗字だった事に、一はまさかと思った。 

「都筑 真知の兄です」

 水無瀬が彼の名前に付け加えるように答えた。それを聞いて、やっぱりそうかと一は思った。あの家の行方不明の2名がこの兄妹だ。

「ここまで君と妹を除いて何人で来た?」

「……4人」

 頭の中で人数を数えるように思いだしながら青年が言う。
 4人で30人を殺したというわけだ。
 事情聴取的なこのやり取りは途中だったが、水無瀬が申し訳なさそうに口を挟んだ。

「……あと3分で緊急会議です」

「ここでか?」

 槙田が頭をかきながら聞く。

「はい」

「わかった」

 水無瀬は今までその準備をずっとしていた。カメラらしきものが取り付けられ、ディスプレイの表示が変わる。
 槙田は時間が許す限り青年から情報を引き出そうとしていた。

「4人とも紅(アカ)い眼をしていたか?」

「してた」

 この目撃証言が正しければ、犯人達ははグールということになる。グールは、人間の血を見たり興奮状態になると、身体に表面的な変化が起こる。普段は人と変わりなくて見分けもつかないが、眼の色が紅くなったり、爪が長く鋭くなったり、歯が牙のように変形し、獣のように変化する。特に眼の変化は顕著で、薬を飲んでコントロールされていても、視覚や臭覚に反応して色が変わっていまう。
 彼が彼等戦闘員を見てバケモノだと言い放っていたのは、彼等の眼の色が紅く変化していたからだ。

「命令をしているリーダーはいたか?」

「いた」

 集団で行動することのないグールが、統率されて犯行を犯すことは稀だ。特殊なケースに分類される。
 監視カメラに映っていた男がリーダーなのだろうか。一はそう考えながら、映像で見た男の顔を思い浮かべていた。

「その中に女は?」

「いなかった」

 予想外なことに、犯行グループの中に女性はいないと青年は言った。てっきりその中にグーラが混ざり込んでいると思い込んでいた。
 行方不明者が出ていたあの事件は、今回の事件とは無関係なのか? 一は自分の中で考えていた仮説は間違っていたのかもしれないと思った。
 ここで時間切れになった。
 ディスプレイに知った顔の人物が映し出される。最近は滅多に会う機会はなくなっていたが、一にとっては昔一緒に仕事をしていた同僚だ。
 かけているメガネを中指で押し上げながら、気難しい顔をした久遠(クオン)が抑揚のない声で話し始める。8年前、異例の措置で桐島警視長の後に就任した。

「グール対最高責任者の久遠です。現在この会議に参加しているのは12ゲートの4署にいる、第1班、2班、3班、19班。13ゲート各署への緊急出動を要請した4班になります。13ゲートは計画され、同時多発的に襲撃を受けました。グールが関係している事件であると踏み、指揮は私が執ります。12ゲートには非常事態宣言を発令。現在、11ゲート死守に向けて態勢を整えているところです。」

 はじめから1ゲート第1班である自分達以外の班も動かされていた事を、この時初めて知ることになった。状況はすでに久遠警視長が直々に指揮を執る事態にまで陥っているという事に、誰もが動揺が隠しきれないでいた。
 犯人の何手も後ろを追っている。そんな不安が湧き上がってくる。
 いつもの事件とは違う。いつもの相手とも違う。
 事態は、現在進行形で悪化し続けている。

「マジかよ」

 千野が真顔で呟いた。
 同時多発的と聞いて、不安感が増す。どうしても19年前のアウトブレイクがリンクするからだ。
 これではまるであの時と同じ。そう思わずにはいられない。
 積 那由他(セキ ナユタ)というグールが起こした、この国を今の状態につくりあげた事件の時と同じだと。





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「神様は賽を振らない」の連載開始。
※物語の特性上、一部不快(グロテスク/残酷)に思われる表現があります。
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