1012345678910111213141516171819202122232425262728293012

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

神様は賽を振らない 第1章 ③

>>03

 一と水無瀬と尚、3人で回った家はこれで5軒目だ。
 12軒ある住宅は、2時間もあれば徒歩で全て回ることができそうな距離範囲といったところだった。
 大体がこじんまりとした家だ。13ゲート街では、テレビやパソコンは一般家庭にはない。食料に衣料品、医薬品など、生活に必要なものは政府が用意してくれる。他の地域との関わり合いは滅多にない。
 寧ろ意図的に遮断されていて、陸の孤島のような生活を強いられている。その方が政府にとって都合がいいからだ。都合の悪い情報が漏れる可能性を、できるだけ回避する為に行使されている政策のひとつ。
 遺体を確認すると、殺害方法は2種類。刃物によって首を切られるか、銃によって撃たれていた。今の所、見つかったのは死体だけで生存者はいない。
 尚が照明のスイッチをカチカチと押した後、そのまま部屋の奥へと足を踏み入れていった。

「あー……、やっぱりここも電気落ちてる」

 庭へと続く窓まで辿り着くと、薄暗い室内のカーテンを開けながら言った。
 一がその後ろを付いてダイニングへと足を踏み入れると、靴裏でパリッとガラスのようなものを踏んだ感触があった。それを確認しようとして床に倒れていたイスにぶつかる。
 乱れた状態のイスやテーブルから、ダイニングテーブルに向かい合って座っていた2人が襲われた事が見て取れる。全部でイスは4脚あったが、残りの2脚はきちんとテーブルへ戻されたままの状態になっていて、その時誰かが座っていた様子は見受けられない。
 踏みつけたものの正体は割れた花瓶だった。元々テーブルの上にあったものが落ちて割れたようだ。紫色のアネモネの花は散らばり、くたっと萎えて床に落ちている。テーブルの下に敷かれているベージュ色のラグに触れると、零れた花瓶の水でまだ湿っていた。
 床には他に、椅子と同じように人が倒れている。外傷が上半身に集中していて、特に顔は酷く殴られて人相はよくわからないような状態になっていた。。着衣や背格好で男性であることはわかる。頭部から血が流れていた。
 もう一体の遺体は頭を打ち抜かれ、半分程喰われた状態だった。

「送電線が切られてそう。あと、電話も通じないから電話線も」

 一は女性の方の遺体も観察し終わると、ダイニングの隅にあったこの家の固定電話の近くにいた水無瀬に向かって言った。それを聞いて、水無瀬は自分の背後にあった電話の受話器を持ち上げて確認をする。
 一は今まで見てきた4軒の家でも電話が不通であった事を確認済みだった。この家も同じく不通だったらしく、返答を待っていた一と目が合うと、水無瀬は首を縦に振って見せた。

「ゼロツーからゼロワン、シュガーボール。そちらで確認した家は、カーテンが閉まっていましたか?」

 無線を通して、全員のイヤフォンから水無瀬の声が聞こえてくる。

「スノーバードからシュガーボール。1軒は窓っ割って侵入したみたいだったから微妙だけど、他は閉まってたよ」

 向こうのグループにいる千野が答えた。
 つまり、家のカーテンを閉めるような日の暮れた時間帯の後に、事件が起きたという事だ。

「シュガーボールからゼロワン。こちらも同様にカーテンが閉まっていました。日が暮れてから送電線と電話線を切断して犯行に着手した可能性が高いと思います」

 水無瀬が再び応答した。
 アウトブレイク以降、停電や不通などの不具合は13ゲートではなくてもたまにある。また停電したのかぐらいに思い、何かが起こったとは思わなかったのかもしれない。危機感は薄れ、この状況に慣れてしまった感は拭えない。それで非常連絡が遅れた可能性もある。
 アウトブレイクが起こった直後は、誰もがちょっとした物音だけでもビクビクしていたのに、制圧後に政府による安全宣言がなされ、その「もう安全です」アピールはうまく浸透した。
 大きな社会不安は国を揺るがす。その為には致しかたないのかもしれないが、隠ぺいされていただけで、最上級極秘事項とされるような事件はその後も幾つか起こっている。

「ジャスパーからシュガーボール。殺し方はどうだ?」

「シュガーボールからジャスパー。刃物で首を斬るか、銃で頭と胸を撃たれています。先ほどの南署のように、拘束されている遺体はありあませんでした」

 水無瀬が言うように、拘束された遺体はあの時に見た警官2人だけだった。

「一応聞くが、生存者は?」

「今のところいません」

「こっちもいない」

 発見した遺体は全てが喰べられているわけではなかった。銃で頭と胸を撃たれているところを見ると、訓練を受けたプロの犯行のようにも思える。争った形跡もあったりなかったりだった。銃声や悲鳴で近所の異変に気付いたのか、逃げようとしたところを出入り口付近で殺されていた遺体もあった。
 尚の様子を窺うと、1度見ていた資料にもう1度目を通していた。それを見て、自分と同じ事を尚も気付いているのかもしれないなと一は思っていた。
 この家には、つい最近まで使用されていたと思われる夫婦の寝室に子ども部屋が2つあった。テーブルにはイスが4つ。
 つまり、足りないのだ。

「あのぅ、この家は4人家族で、4人が住んでいたはずですよね? あと2人が見つかりません」

 尚が槙田と水無瀬2人の会話に割って入った。声は無線を通じて全員に届いている。
 この家には2階がなかった。部屋はダイニングを除いて3つ。尚は会話を聞きながらもう1度部屋を見まわっていた様だが、やはり2人は見つからなかった。バスルームにもトイレにも居ない。
 思わぬところから発見される場合もある。チェストの中、クローゼットの中、ベッドの布団をはぎ、ベッドの下も覗いた。様々なところを探したが、それでも見つからない。
 他の遺体は『そのまま』見つかっている。隠すにしても、ここの2人だけ隠す意味もよく解らない。

「……足りない。こっちが男で、あっちが女の死体だから、あと、男女2人の死体があるはずだけど、きれいさっぱり無い」

 今度は一が口を挟む。

「不自然だよね?」

 そう言いながら、もしかしたら逃げて生きているかも。なんてことを尚は思っているのかもしれないなと一は思った。

「私も気になっていたんです。遺体から誰が誰だかの見分けはつきませんが、居るはずの2名が見当たりません。もしかしたら、次に向かう隣家に逃げ込んでいるかもしれませんが……」

 水無瀬が次に向かう家を地図で確認しながら言った。

「……調べが終わったら南署で合流しよう。シュガーボールはそれまでにこの街で起きた過去5年の事件も調べておいてくれ」

「了解」

 通信はそこで一旦終了した。
 一達は次の家へと向かう為、その家を後にした。





にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村


Web小説 ブログランキングへ
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

コメントの投稿

secret

top↑

comment

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

top↑

プロフィール

美雨

Author:美雨
オリジナル小説・詩の下書きblog
「神様は賽を振らない」の連載開始。
※物語の特性上、一部不快(グロテスク/残酷)に思われる表現があります。
※作品の転載・お持ち帰りは禁止です。何かで使用されたい場合は、事前にお声かけください。歓迎★
※詩を歌詞として曲などで使用していただけるかた募集中。また、その逆も募集中です。

最新記事

カテゴリ

リンク

ブロとも申請フォーム

人気ブログランキング

にほんブログ村

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。